第2章 そして貴方と出会った
*****
「姐さん、もう寝た?」
「おう、死んでるみてぇに眠ってんぞ。」
「うん、いつもの事だから気にしないでね。」
「マジでか。これじゃあ朝起きて本当に死んでても分かんねぇな。」
長い時間、緊張状態が続いていたからか、菊は廊下で揚羽を見ればすぐに安心して眠りについた。日が昇る吉原を歩く銀時の腕の中で静かに眠る。そんな菊が起きないように、銀時の歩みも緩やかになっていった。
隣には揚羽が歩き、物珍しそうに吉原を見回していた。火災の後は菊に付きっきりで外に出た事はなかったのだ。初めて見る中心部の様子に心が躍る。今まで吉原の中で暮らしていたというのに、こんなにキラキラしてる所だとは知らなかったのだ。通り過ぎる遊女達は皆、笑顔が太陽に負けない程に輝いていて、眩しいくらいだった。あちこちから聞こえてくる平和な笑い声も、想像以上に心地よい響きで揚羽は嬉しくなる。
初めて知った己の産まれた地の眩い一面に感動し、言葉が見つからなかった。銀時も歩みを進めるだけで何も言わない。
しばらくすれば地上へと繋がるエレベーターに辿り着く。中に入れば、改まった態度で揚羽は銀時に話しかけた。