第2章 そして貴方と出会った
月詠はそうそうと立ち去った銀時の背中を呆れながらも見送った。深い溜め息を吐けば、後ろから声が掛かる。
「あの顔じゃあ、銀さんは本気みたいね。」
声の主は日輪だった。銀時が月詠と共に部屋に入るのを見かけ、挨拶でもしようかと思ったが、複雑な話が始まったのでそのまま揚羽とは少し離れた廊下で待機していたのだ。出てきた銀時に彼女も月詠と同様、彼が面倒な依頼を引き受けた事に驚いていたようだ。
「底抜けのアホじゃ。だが、アヤツらしい。」
付き合いは長くないが分かる事はある。あの男は一度背負うと決めれば最後まで背負った者を見捨てない。月詠の反対も聞く耳を持っていなかった時点で、銀時が菊と揚羽を背負った事は既に明らかだった。今回拾ったのは少々厄介な人物かもしれないが、月詠は菊にとって吉原に残るより良い未来が待っている事を願うしかなかった。
日輪と顔を合わせれば、二人は揃えて呆れた笑みを浮かべていた。