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さよなら桃源郷(銀魂:銀時夢)

第2章 そして貴方と出会った


 悲痛な菊の姿に月詠は胸を痛める。先ほどまで自分にとって大切な吉原を罵倒していた女に腹が立っていたが、そんな彼女も間違いなく、月詠の護りたい吉原の一人なのだ。どんな生活を強いられていたのかは、悔しいが今の今まで何も知らなかった。しかし手助けになるのなら、そしてそれが今からでも遅くないのなら、月詠は菊に手を差し伸べたかった。しかし状況を見れば一目瞭然で、菊は彼女の手を拒むだろう。

 すすり泣く菊が痛々しく、彼女の悲しみを晴らす術はないのかもしれないと月詠は諦め始めていた。月詠の隣でずっと傍観していた銀時も何も反応を示すつもりはないらしい。依頼を受ける受けないの返事はまだだが、この男に子供を養う余裕もないはずだ。この状況をいつものダラけた双眸で見ているだけだが、依頼は恐らく断るつもりなのだろうと月詠は推測した。ならば菊が満足できる改善策は皆無になる。仕方のない状況なのだと菊を説得するように月詠は口を開く。

「もう諦めなんし。たしかに吉原ではぬしが不満かもしれぬが、ぬしの子供はちゃんと地上の寺子屋へ毎日通わせる。心配せずとも、ぬしの子供には吉原以外の未来がありんす。ぬしももう体を売らなくとも良い。ここの茶屋の手伝いとして稼げるようにわっちが口添えもする。」

「おい、あんた子供の為なら自分の命も売れるのか。」

「銀時!」

 自分に出来る最大の提供を月詠は出したが、横から銀時が口を挟んだ。その発言は、もう既に己を酷使した菊には聞かせたくない質問だった。名前を呼んで制しようとするが、菊は涙だらけながらも覚悟を持った顔で銀時に答える。
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