第2章 そして貴方と出会った
*****
しばらくすれば、参ったというような表情をした月詠が部屋から出てきた。疲れが顔に出ている。しかしすぐに銀時と隣の揚羽の存在に気づき、歓迎の笑みを浮かべる。二人とも廊下に座り込んでいる事から、月詠は二人が先ほどの騒動を聞いていた事を察した。
「…すまなかったな。長い間待たせたようだ。ぬしら、あの娘に会うか?」
いましがた落ち着いたから話は出来るはずじゃ。苦笑を携え、月詠は提案した。揚羽はすかさず立ち上がろうとしたが、肩を銀時に押さえられた。銀時をみれば彼は視線で待つように目配せしていた。意図は分からなかったが、揚羽は素直に地面に腰を戻す。
それを確認した銀時は立ち上がり、月詠に自分だけが中の娘に会う事を伝える。月詠もまた、困惑した面持ちをしたが空気を読んで銀時の好きなようにさせた。一度出て行った部屋に戻り、背中を向け座り込んでいる菊に銀時を紹介する。
「こやつが吉原を二度も助け、そしてぬしの命も救った救世主の坂田銀時じゃ。」
紹介するも、菊の反応はなかった。そんな様子に月詠は溜め息を一つ吐く。
「んな大層なもんになった覚えはねぇよ。俺ァただの万事屋だ。」
「…よろずや?」
大げさだと訴えるように銀時は月詠が述べた肩書きを否定し、本業は万事屋だと告げる。それを聞き、菊はゆっくりと振り返った。初めて銀時を目の当たりにした菊にとって、銀時が着ている着物と己の膝に掛けられている着物が同じ柄である事が印象的だった。彼に反応を示した菊に銀時は答える。