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さよなら桃源郷(銀魂:銀時夢)

第2章 そして貴方と出会った


 揚羽の説明で何となく『鈴蘭』と呼ばれる事は決して名誉な事ではないのは分かった。しかし、それでも銀時の疑問は消えなかった。

「けどよ、今までそう呼ばれてんなら、別にあそこまで怒る必要ないんじゃないか。呼ばれ慣れてんだろ、普通。」

「今まで姐さんを源氏名で呼んでいたのは遊郭での同僚か、お客だけだから。姐さんの苦労も知らない他の遊女達にその名前で呼ばれても、馬鹿にされたようで嫌なんだと思う。」

「ふ~ん。そういうもんかねぇ。」

 女心は理解出来ない、否、理解するのも面倒くさいとでも言う風に銀時は適当に流した。

「私も、本当の理由は分からない。でも数ある理由の一つとしては、間違ってないと思う。」

「そうかい。随分あいつの事わかってんのな。」

「…全然わかんないよ。どんなに知りたくても、姐さんは姐さんの事、私に教えてくれないの。本当はもっと知りたいのに。」

 少女の瞳には寂しさが表れていた。そして二人の間には再び静寂が訪れる。会話はないもの、待機している廊下には未だに菊の怒鳴り声と月詠の宥める声が響いてくる。ちょうど聞こえてきた声は、何故助けた、命などあの場で終わらせるつもりだった、手当も迷惑以外の何でも無い、などであり、それを耳にした銀時はげんなりしていた。どういう経緯かは知らぬが、いつの間にか菊は助かった事に対して不満をぶつけているようだった。

 そんな声は、もちろん隣に座る揚羽にも届いている。己の命を救った菊が生きる事を望まぬのを知り、少女は落ち込むものと銀時は思っていたが、予想に反して余裕のある態度で菊の声に耳を傾けていた。どうやら菊の生に対する薄い執着は理解していたようだ。そして二人の間の沈黙を破ったのも、揚羽からだった。
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