第2章 そして貴方と出会った
「お兄さん、私は揚羽ですよ。『死角』は、私や姐さんが暮らしていた地域の俗称です。」
「ふーん。」
思っていたよりもつまらない解答だったのか、銀時は適当に反応する。そんな彼を見て、揚羽は素直に思った事を口にした。
「聞いてきた割に、興味なさそうですね。」
「どうせアレだろ。吉原の中で一番ややこしい場所にあるとかそんなもんだろ。」
「凄いですね、お兄さん。半分正解です。」
「半分?」
やる気の無い声で銀時は問い返す。生気のない表情で、続きが聞きたいのか聞きたくないのかがよく分からなかったが、とりあえず揚羽は説明をもう少し詳しく告げた。
「はい。吉原の中で、地上へ繋がるどの出入り口からも遠い事から、吉原の『死角』と呼ばれている説があるんです。」
「で? 他にもそう呼ばれる理由があんの?」
早くもう半分の答えをくれと言わんばかりに、銀時は少女に訊く。
「はい。もう一つの説の方がぴったりしてる感じがします。」
「もったいぶらずに言えよ、揚げパン。」
「揚羽です。もう一つの説は、あの区域が『死の角』と呼ばれているから。」
わざと名前を間違える銀時に対して警戒する必要性、否、敬う必要性を感じなくなったのか、揚羽はくだけた口調へと変えた。