第8章 子の心、親知らず
「やれやれ、随分と近所迷惑な泣き声でしたね。おかげで旦那を探す手間が省けやしたぜィ」
「総一郎君」
後ろからサクサクと草中を歩きながら銀時に声をかけたのは真選組の沖田総悟だった。黒い隊服に刀を腰にぶら下げた姿はいつもと変わりないが、その右手には普段は目にしない「呂太」のロゴが大きく印刷されている紙袋がある。
「旦那、総悟でさァ。もうチビは寝ちまったんですかい?」
「ああ」
「早いこって。ま、ガキは寝ないとデカくなりやせんからねィ。コイツは特に遅れを取り戻さないと」
一ヶ月ほど前に知り合った揚羽を見つめながら、沖田は言った。
「そんな事より何? 何か用? 銀さん近所迷惑で通報でもされちゃったワケ?」
「そうだと嬉しかったんですがね。今日は生憎、時間があったんでコレを届けに来ただけなんでさァ」
用件は何だと急かす銀時に答えながら、沖田は手にしていた黄色い紙袋を差し出す。器用に揚羽を片腕で抱いて、渡された袋を受け取る。中身を確認した銀時が目にしたのは袋いっぱいに入れられた着物だった。それらを見て銀時は沖田の用を理解した。