第8章 子の心、親知らず
「姉上、自分がすぐに居なくなるのを知ってたんでしょうね。嫁入りして結婚生活が待ってるってーのに、身の回りの物を殆ど処分してましたぜィ。纏まった時間が空いたんで、やっと遺品の整理が出来ると思って片付けてたんですが、残ってた着物はこの数枚だけなんでィ」
哀愁を感じされる雰囲気の中、沖田は言葉を紡ぐ。銀時に手渡したのは亡くなった沖田の姉、ミツバの着物だった。前々から銀時に頼まれ、もし菊に譲れる着物があれば譲って欲しいと言われた物を届けにきたようだ。しかし、沖田の言葉に銀時は少し気が引けた。
「良いのか? 確かに余りが貰えりゃあ助かるんだが、大事な形見だろ」
「どうせ女物の着物なんざ持ってても、使い道がないんで宝の持ち腐れでさァ。それに旦那には姉上の事で世話になってるんで、気にしやせんよ。まあ、もし俺に女装癖でもついた時にゃあ遠慮なく返してもらうんで」
「お前の顔でそれを言うと、あんま冗談に聞こえねーな。んま、助かったわ。サンキュー」
「あ、でもタダであげるつもりは無いんで」