第8章 子の心、親知らず
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宿題を中断させられ、外へ連れ出された揚羽は困惑していた。てっきり褒美のデザートを買うために万事屋を出たと思っていたのだが、銀時に導かれやってきたのはだだっ広い空き地だった。大きめな公園でも作れるんじゃないかと思うほど広いそれは、誰も管理していない土地なのか、背の低い雑草が一面にはびこっている。その地の中心まで進んでゆけば、銀時は足を止める。同じく足を止めた揚羽は、ここに何かあるのだろうかと周りをキョロキョロしだした。しかし頭を襲った痛みと、耳に入った軽い音で注意がそちらへ向く。
「いたいっ!」
「今のはアイツに噛み付いた罰だ」
「銀兄さん? いたっ!」
バチッと再び良い音を響かせながら揚羽の頭を叩いた銀時は、真剣な表情で幼子を見据えていた。
「そんでコイツは、正直にねーちゃんと話さなかった罰だ」
二度も平手打ちにされ、揚羽は地味な痛みを訴える頭を押さえながら銀時を見上げる。そこには見た事のないほど険しい表情があり、揚羽は少し狼狽えた。
「いつまで意地張ってんだ」
「何が?」
「ねーちゃんに言いたい事、あったろ。吐け」
元から低い声の持ち主ではあったが、銀時は更に脅しに近い声で揚羽に迫る。言われた事を理解した揚羽は貝のように押し黙った。けれど銀時は沈黙を許さず、再度繰り返す。
「吐け」
諦めるつもりもなく促し続ける銀時に、揚羽は重く閉ざされた口をようやく開いた。