第8章 子の心、親知らず
「私はあの子に何も与えられないし、何もあげられない。唯一、貴方に任された家事もまだ中途半端なのに、あの子の面倒を見てくれてるでしょう? だから、ありがとう」
改まった回答に銀時はため息を吐く。
「あのなぁ、確かにそんな感じの約束だったけどよォ……」
「けど?」
「……何でもねえ。夕飯が出来る頃には戻るようにする」
「いってらっしゃい」
「おう」
菊は万事屋の一員、家族のようなもの。それは銀時にとって、そして神楽や新八にとっての真実だ。けれど当人は未だに、依頼の代償として住まわせてもらっていると強く思っている。その想いからくる言葉だと分かると、銀時は何とも言えない気持ちにさせられた。成り行きの結果なので仕方ないが、菊の認識はどうしても否定したかった。しかし今は時間がない。菊は料理をしなければならないし、銀時も出かけなければならない。何より、こういう話は出来るだけ二人きりで話せる方が良いだろう。そう納得し、銀時は次の機会に期待をしながら、宿題をする揚羽に声をかけた。