第8章 子の心、親知らず
何となく神楽と新八の会話を聞いていた銀時は、今晩の献立が卵かけご飯になるのが容易に想像できた。それはそれで良いのだが、神楽だけに任せると非常に殺風景な食卓になるのは分かっていたため、銀時は菊にある事を訊く。
「やべぇな、神楽に任せると卵かけご飯しか食わせてもらねーぞ。なあ、冷蔵庫の中の物で何か作れそうなモンあっか?」
「たしか、もやしと薄切りの豚肉があったわ。茹でてポン酢で味付けする簡単なものしか作れないけど」
「いや、おかずが一つでもありゃあ上等だ。頼めるか?」
「わかったわ」
なんとか晩飯は二品に増えそうだ、と銀時は安心する。さっそく料理をしに行こうと背を向ける菊だが、銀時はもう一言だけ彼女に告げた。
「あ、あとチビ連れてちょいと出かけてくっから」
「今から?」
「おう。すぐ帰ぇってくる。あれだ、テストで良い成績とった褒美っつーの? 何か適当にデザートでも買ってくるわ。そうさなぁ、気分的にプリン当たりにすっか」
「ありがとう」
「…………何でお礼?」
頑張った子供への褒美にデザートを買う。世間一般ではごく当たり前な褒美の仕方であり、万事屋でもさして珍しい事でもなかった。揚羽がテストで良い点を取るのは初めてではないし、神楽も神楽で仕事を頑張った褒美として酢昆布を遠慮なくねだった。それらを買いにいくと菊に告げれば、いつもなら「いってらっしゃい」を言われるだけなのだが、今日の返事は妙である。
問い返せば菊は姿勢を正して銀時と向き合った。