第8章 子の心、親知らず
本格的に日常へと戻ってゆく万事屋の雰囲気に流され、銀時と菊も私生活へと戻る。その後は本当に平和な時が流れた。給料袋を銀時に渡した神楽は好きなテレビ番組を事務所のソファーで見始め、揚羽は側のテーブルで宿題に取りかかっていた。銀時は自分のデスクで帳簿やら何やらと似合わない事務作業を行い、菊はあやめが現れた事によって手を止めていた洗濯物の取り込みを再開する。
そして時間だけが過ぎて時計の針が五時を回った頃、ジリリリリッと万事屋の電話が鳴り響いた。たいして面白くもない番組しかない時間帯だったのか、神楽は珍しくソファーから立ち上がって受話器を手にした。「もしもし万事屋の可愛い神楽ちゃんアル」と始まった言葉はやがて「何だメガネかヨ」とテンションの違う声で対応しだした。
どうやら電話越しの相手は、介護の手伝いの仕事をしていた新八のようだ。用件は単純で、依頼にもう少し時間がかかるとの事。そして食事当番を誰かが代わってくれとの事だった。それを聞いた神楽は迷う事なく「私がやるネ!」と自ら立候補する。張り切る神楽の返事を聞いた新八は、クスクスと笑いながら礼を告げる。二人の会話はそこで終わり、神楽は受話器を元に戻して台所へと小走りに向かった。