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さよなら桃源郷(銀魂:銀時夢)

第7章 外の面(とのも)


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 五分ほど歩いただろうか。銀時は道の先にやっと目的地である団子屋「魂平糖(こんぺいとう)」の看板を目にする。上手い甘味にありつける、と心が躍ったが、よく見れば店は客で溢れていた。しかも、長蛇の列が外まで大分続いている。

「うわっ、何だあの行列。新しい看板娘でも雇ったのか?」

 前はいつ潰れても可笑しくないほど客足がなかった団子屋だったはずだ。異星から来たライバル店「餡泥牝堕(あんどろめだ)」と団子勝負で勝利を収めた際に客は戻ったと聞いていたが、まさかここまで繁盛するとは予想外だった。しばらく店に来なかったうちに、随分と様変わりしている。

 店が前向きに変化したのならば、それはそれで良いとは思う。しかし、店の外の長椅子でのんびり茶でも啜りながら団子を注文したかった銀時にとって、この状況は頂けない。団子を持ち帰りする手があるが、長蛇の列が意味するのは長い待ち時間だ。ちらっと菊を見てみるが、明らかに足に限界が来ている。

 本来、先ほどの本屋からこの団子屋まで歩くのに二分もかかならい。五分もかかったのは菊の歩調が遅くなったからだ。今まで碌な運動をしなかった、否、出来なかった菊にとってよく頑張った方だろう。普段、吉原にいた時から素足での生活に慣れてしまってる菊にとって、履物で歩く事さえ大変だったはずだ。お妙から貰ったお古の下駄を履いてはいるが、親指と人差し指の間にある鼻緒に当たった肌は赤く擦り剥けていた。痛くてたまらないのだろう。足は鼻緒に当たらないように下駄の奥まで入れていない。そんな状況でも一日中歩いても文句を言わず、ここまで銀時にも付いて来てくれた。その褒美と言ってはなんだが、少しでも多くの「外の世界」を味合わせたかったのけれど、それも裏目にでてしまったようである。余計に菊を疲れさせてしまった上、目的の甘味も手に入らないかもしれない。結局、団子を諦める他ないようだ。
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