第7章 外の面(とのも)
「いらねーのか?」
「お金を持ってないわ。それに、どうせ私には字が読めないし、きっと揚羽には簡単すぎて詰まらないと思うから。」
「そーか。んじゃ、行くぞ。」
きっと銀時に頼めは絵本は簡単に手に入る。特に最近の銀時の懐は暖かい。万事屋の仕事は十分な収入を与え、新八に「無駄遣いするな」と言う忠告までもらうほどの余裕があった。しかし、菊は必要以上に我が侭を言いたくはなかったし、我が侭を言うほどの事でもないと判断した。
きっと機会があればまたあの本に出会える。根拠の無い自信が菊の欲を削いだ。そうして本屋を去る銀時の背中を追うが、ある事に気づく。
「待って、貴方の本は?」
ジャンプを買いに来たはずの銀時は、本屋に入る前と変わらず手ぶらだった。
「ああ? ああ、表紙みて昨日買った事思い出したんだよ。ったく、とんだ無駄足だったなー。ま、ジャンプ代が浮いた分アレだ。団子でも食いに行くとすっか。」
早々と本屋での用は終わったとばかりに、銀時はまた菊の手を引いて甘味屋を目指した。今度は何処へ連れて行かれるのかと気になりながらも、菊は銀時に進む道を委ねる。