第7章 外の面(とのも)
何冊かパラパラと絵本に目を通せば、ふと、一冊の表紙が目に入った。そこにはシンプルに墨と筆で描かれた馬がいる。どこか古臭い絵柄だが、そこには懐かしさを込み上げさせる何かがあった。気になり、菊はその本を手に取る。一頁一頁めくっていき絵を一つ一つ見ていけば、ある事に気づた。その本は昔、母が自分によく読み聞かせていた絵本と同じだったのだ。内容はもう覚えていないが、絵だけは何となく記憶にある。そうと分かれば一つ一つの絵に大事な意味が秘められているように感じ、菊の頁を捲るペースは遅くなった。
物語の中盤あたりに差し掛かれば、馬以外にも動物が登場した。それを見た菊は目を見開いた後に、小さな笑みを浮かべる。時間を忘れるほどに、彼女はその絵をずっと眺め続けていた。
「何か良いの見つけたのか?」
不意に、いつの間にか背後から絵本を覗き込んでいる銀時に声をかけられた。驚いて肩が少し飛び上がったものの、菊はすぐに落ち着いた返事をする。
「……いいえ。ただ、この絵が懐かしくて。」
先ほどから見ている頁を銀時にも見やすいように持ち直す。それを見た銀時は「ふーん」と大して興味のないような反応を返した。しかし反応の割には視線を本から外さない彼に、菊は紙の一部を指差しながら自分が何を見ていたのかを伝える。
「この猫。これが昔、お母さんに見せてもらった猫よ。」