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さよなら桃源郷(銀魂:銀時夢)

第7章 外の面(とのも)


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「オメーら先に帰ってろ。俺はちょっとジャンプ買いに行ってくるわ。」

 後は食料が腐らない内に帰るだけなのだが、銀時はもう一つ用事があるとばかりに切り出した。

「あれ? 昨日の発売日逃したんですか? じゃあ僕達は先に帰りますね。寄り道しても構いませんけど、あんまり無駄遣いしないで下さいよ。」

「わーってるから、さっさと帰りやがれってんだ。」

 早く食料を冷蔵庫に入れたい新八は、残りの荷物を銀時の腕から貰う。そのまま銀時は新八達と道を別れるが、万事屋に帰ろうとする菊だけは手を取って引き止める。その行為に菊は疑問符を浮かべた。

「オメーは俺に付き合え。せっかく外にいんだ。ついでにもう少しこの町を見せてやるよ。」

 そのまま手を引かれながら、菊は銀時と共にゆっくりとした歩調で歩き始める。ジャンプを買うと言う宣言通り、二人が立ち寄ったのは小ぢんまりとした本屋だった。好きな物でも見に行けと言いたいのか、銀時は店前で菊の手を離して週刊・月刊の漫画雑誌が並ぶ棚へ足を運んだ。目当てのジャンプをすぐに見つけて会計にでも行くのかと思ったが、銀時はそのまま別の漫画雑誌を立ち読みし始めた。これでは本屋を去るのに時間がかかるかもしれない。そう思った菊は思い切って本屋の中を覗いてみる。

 字の読めない菊は正直、本屋など自分には場違いな場所として認識していた。棚にずらずら並ぶ背表紙はきっと魅力的な題名を構えているに違いない。しかし、それらは羅列された謎の記号にしか思えなかった。読めない字が目に入る都度、菊の胸には羞恥心が募る。そんな気持ちを遠ざけようと、菊の足は自然と絵の多い児童書コーナーへ向かう。

 子供向けの本がある一角に辿り着けば、一気に菊の目を楽しませる物が増えた。色とりどりで可愛らしい表紙がいくつもある。その中で目立つのは児童書コーナーのど真ん中に構えられている絵本のフェアだった。動物がテーマなのか、その棚に並べられている本は全て犬や猫、キツネや熊などと言った日の本で馴染みのある生き物の物語が置かれてある。銀時を待っている間、暇つぶしに絵本も眺めるのも悪くないかもしれない。そう思い、菊は気になる本がないか探してみる。
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