第1章 懺悔
「わぁー!列車だ!速い!凄い!広いね!!」
「頭飛ばされるなよ」
列車の窓から顔を出して広い大地を初めて見るは目を輝かせて席を立つ。
あの後、の家に押しかけた甚爾の威圧感で両親は腰を抜かし育児を甚爾に譲った。と言っても書類ではなく形だけだ。親に捨てられただがとっても清々しく鳥籠から解放された気分だった。
罵られ
陰口を言われ
周りから隠され
自分は周りと違う、イカれた子供扱い。
仕方ないとわかっていた
諦めていた
誰もわかってくれない
わかってくれる“ハクちゃん”はを食べるためにずっとそばに居た。もし甚爾が“ハクちゃん”と同じで利用するために共に居たとしても、それでも構わない。甚爾のおかげで怖い呪霊はぱったりと居なくなった。顔の見えない大人も、泥を投げるクラスメイトも居ない。
窓の外に広がる緑豊かな大地を横目に見ながら、だるそうにたこ焼きを頬張る甚爾。たこ焼きに釘付けになるを見て手を止める。
「食うか?」
「うん!」
箸を受け取ろうとしたが、口元にたこ焼きが運ばれる。たこ焼きを頬張ると冷めていたが食べた事ない味に目を輝かせる。バタバタと足を揺すって口元を押さえる。
「おい、どうした?」
「美味しい!これなんて言うの!?」
「たこ焼きも食べた事ないのか?罪な野郎だな」
呆れたように言う甚爾は頬に手を当てて姿勢を崩し楽にを見下ろした。その姿も色気があってカッコイイ。
「これからは美味いもんを腹いっぱい食べさせてやるよ」
「ホント!?」
「ああ、女には寛大なんだぜ」
もぐもぐとたこ焼きを食べる甚爾の言葉に耳を疑う。
これからも沢山食べれるの?
今日だけじゃなくて?
冷たい水に浸った残飯を思い出すとじわっと涙が浮かぶ。
「とーじ…ありがとう」
ポロポロと泣くに甚爾は箸を落とした。甚爾は人に感謝されたことがない。呪力を持たない事で一族に嫌われ、幼い甚爾を呪霊の中へ放り込む親に恨みさえ抱いた事もある。だがどうでもいい、自分のために生きると決めて家を出た。自分が何かを手に入れることなどできるとは思わない。
「とーじのおかげで、幸せだよ」
この生き物はなんなのか甚爾には分からない。
ただ「おお」と気の抜けた返事をするのがやっとだった。