第1章 懺悔
行くあては決めておらず、列車に揺られて点々としていた。
甚爾は嫌いな奴をボコってくる仕事らしく、一点に留まらない。近くのホテルで待機していると大金を持って帰ってくる。それを半分に割って、はその半分で甚爾との生活費を賄っていた。甚爾は残りの金で呪具を買っているようで家庭のお金は全てが握っていると言っても過言では無い。
そんな生活を一年続けていたある日、「学校に行きたいか?」と突拍子もない爆弾発言を甚爾が落とした。
「学校?」
「行きたいなら行ってもいい」
新聞を読んでいた甚爾が顔を上げて驚いているの反応を見る。ぱちぱちと瞬くは視線を下げる。学校でいい思い出は無い。でも行きたいと心の片隅で叫んでいた。
新しい場所だから大丈夫。
誰もの事なんて知らない。
だから新しい友達が出来るかもしれない。
同い年の女の子の友達は喉から手が出るほど欲しい。
「でも…いいの?とーじ寂しくない?」
「ア?寂しいに決まってんだろ。5時が門限だ」
「へ?」
寂しいと聞いて驚いたが嬉しさが込み上げてくる。不機嫌そうな甚爾にが必要とされてる錯覚を起こさせる。
「門限って言うのはその時間までに帰ってくることだ。わかったか?」
「5時になるまえに帰るんだね!わかった!」
ハイっと大きく手を真上に伸ばすと、腰を引かれて太い膝の上にまたがる。乱暴に頭を撫でられた。初めの頃より優しく、慣れた手つきで気持ちいい。犬にでもなった気分だ。
甚爾が仕事に行くのは数少ないが、彼がいないと布団にくるまって帰りを待つだけ。そんなを心配した甚爾が本屋で子供の成長という本を見て学校を進めたのだった。しかし学校に通わせていいのか悩んでいた。もし通い始めたら自分への対応が変わってしまうのではないか…甚爾に理解できない不安が過ぎる。
それでも膝の上でルンルンと足を振っているにやはり行くなと言えなかった。
「次はどこに行くの?」
「美空市美空町」
「綺麗な名前!」
「そこの小学校に話をつけてやるから、しばらくは落ち着いて過ごせる。嬉しいか?」
「うん!私ご飯作る!」
「火傷するなよ」
「しないよ!」
甚爾の膝の上で蜜柑の皮を剥き、ゆっくり口を開けた甚爾の口内へ実を放り込んだ。