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歪み

第1章 懺悔


「貴方も幽霊?」

「違ぇよ、アイツらは呪霊だ…って、ガキ相手に何言ってんだ」

男は首に手を当てて骨を鳴らし、その仕草にも釘付けになる。

「ハクちゃんは“じゅれい”なの?」

男はが少量の呪力を持っているただの一般人だと察した。

「長生きしたきゃアイツらに構うな」

男の精一杯の忠告だった。
たとえ睨んでいようと、微笑み一つ無く見下ろされても、は自分のために言葉をくれるのが嬉しかった。

「わかった!」

笑って頷くと、男は頬に手を当てて固まった。
まさか微笑まれるとは思わず男は少し居心地が悪くなる。

「わたし!黒豹さんはなんて言うの?」

「黒豹?俺の事か?」

「うん!大きくてカッコイイ!」

手を広げて大きさを表現する。

「俺がカッコイイか…オマエ男を見る目がないな」

そう言って悲しそうに笑った。
は意味が分からず首を傾げる。

「お名前は?」

「甚爾だ」

「とーじ?」

「ああ」

「私の二人目のお友達!」

は甚爾の太い腕に触って嬉しさのあまりジャンプする。二人目のお友達は大人で、男の人だ。それに大きくてカッコイイ。これで幽霊なんて怖くない。

「お友達か」

なれない響きに呑気なガキを見下ろす甚爾はの笑顔になぜか抗えなかった。なにも知らない笑顔。甚爾の顔を一目見ただけで子供は泣き出すし、禪院家ではあるはずも無い。

今まで欲しかった物を容易くくれるが不思議で仕方ない。

「いいぜ、オマエのお友達になってやるよ」

大きな手がの腰を掴むとヒョイッと持ち上げられる。
肩に乗せられて川沿いを歩く。

「わぁ!高い!」

太い首元にしっかり捕まって上空からの景色を堪能する。
少し歩くだけで“ハクちゃん”が居なくなったのそばには呪霊がやってくる。
甚爾は呪具で瞬きしている間に切り刻んでいた。
揺れも風もなにも伝わらず快適に肩に乗る。

甚爾はまさに百獣の王の黒豹だった。

「オマエのお友達は俺だけだ。他の奴にはついて行くなよ?」

「うん!とーじだけ!」

強くてカッコイイ友達を手に入れた。
二人の姿はまるで親子のようだった。
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