第4章 牛おらふくん目線
僕は牛おらふくん。昔からそう呼ばれている、手乗り牛なんだって。
僕は牛だからいっぱい牛乳を出すことがお仕事だった。だから僕は精一杯牛乳をバケツに入れて飼い主にたくさんプレゼントした。そしたらある日、もういらないと言われて、その人とは会わなくなった。僕はMOB販売所に売られたみたいだ。
そこにはいっぱいのMOBと人間がやって来た。特に人間は僕のことを見てとてもにこにこするんだけど、店主さんと話している内にどんどん変な顔をして僕の前からいなくなる。なんでなのかは僕もよく分からなかった。店主さんはよく落ち込んでいるから、僕は用意されたバケツにまた牛乳を入れてあげた。店主さんはその度に僕を撫でてくれてありがとうって言ってくれるから、また明日もあげようと思う。
別の日に、僕の目の前にきれいな女の人がやって来た。目の前にあんまりじっといるから、僕はバケツに牛乳を入れてあげると、女の人はありがとうと言ってくれた。そしたら店主さんが慌てたようにやって来て何か話していた。店主さんはちょっと自信なさそうな顔をしていた。
それからしばらくあとになって、また女の人が僕の目の前にやって来た。また牛乳が欲しいのかな、とバケツに牛乳を入れると、今度はなぜかクスクスと笑った。僕が首を傾げていると、女の人は優しい声で、君はいい子なんだね、と言った。
「あの、この子飼いたいです」
え。
初めて聞く言葉に僕はびっくりした。見たら店主さんもびっくりしていて。そして女の人は僕にこう訊いてきた。
「どうかな、牛おらふくん。私の家に来る?」
もちろん、いいよ! 僕の言葉は人間には伝わらないみたいだから、代わりにモーって鳴いてみせた。すると女の人はまた楽しそうに笑うから、僕も人間みたいに笑ってみたいなと思った。
それが、僕と今の飼い主さんとの出会いだったんだ。