第3章 ぼんスケルトン目線
「わ〜……これが手乗りスケルトン……」
落ち着いた声でこちらをみつめる女性の目を見て、俺は行儀よくしようと寝床から飛び出したのだが……。
ずどっ……!
「わ?!」
鈍い音と女性の悲鳴。俺はここぞとばかりに大きく転んでしまったのだ。
「だ、大丈夫?!」
女性は慌てて手を差し伸べようとしてきたが、あいにくこの飼育カゴの中には人間の指先すら入らない。俺はすぐさま立ち上がって平気だと伝えようとした。女性はすぐに安心したように微笑んだ。え、かわいいよな、この人間。
「そのスケルトンはちょっと不器用でしてね。前まではサーカス団の見習いだったようなんですが」
と説明し始め、おい、余計なことは言うなよと俺は店主を睨みつけてやったが、残念ながらこちらの言葉は通じない。店主はそのまま、俺の取り扱い方法を話続けた。
なんとかこの人間に気に入られたい俺は、もうしばらく使っていない弓矢を拾い上げて構える素振りを見せた。すると女性が、かっこいいねと言うもんだから、俺は恥ずかしくて逃げてしまいたくなった。
「この子はいくらですか?」
しばらく俺を観察した人間の女性は、店主を振り向きながらそう質問をした。え、まさか。信じられない気持ちと早まる気持ちが俺の足を飼育カゴの端へと走らせた。店主は半額の値段を言った。人間の女性は迷いなく、飼いますと言ったのだ。
え……?
俺の脳内処理が何も思いつかないまま、間もなく俺の飼育カゴに紫のカーテンが被せられる。それからぐらりと揺れて、その後のことはよく分からない。
分かることは、俺はその人間の女性の家に住むことになり「ぼん」と名付けられたことくらいだ。