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こちら、MOB飼育係[dzl]

第2章 雪だるまドズル目線


 僕は雪だるまのドズル。ドズルというのは、今の飼い主さんが名付けてくれた名前だ。
 昔は、なんて呼ばれていたんだったか、今ではもう思い出したくない。僕の足跡に残る雪が深い森の中でも道標になると大活躍したこともあったけれども、時代が進んで人々は松明を用い、火で解けてしまう雪の足跡を残す僕は自然と使われなくなった。
 そのあとは、雪製造機として狭いところに閉じ込められて暮らしていたけれども、あまりいい生活とは言えなかった。首紐で常に繋がれていたし、脱走しようとすると、人間に嫌なことばかり言われてまた閉じ込められてしまう。それを繰り返していたある日、僕はMOB販売店に売り飛ばされていた。
 もうそれなりに歳も取っていたし、周りは次々と売られて僕は売れ残りだった。販売主も僕を見るなり顔をしかめてばかりいたから、僕はそろそろ廃棄処分される手前だったんじゃないかな。
 そんな時、僕は今の飼い主に出会った。
「こんにちは〜」
 その人は、若い女性だった。このお店には老若男女問わず色んな人が来ていたから違和感はないんだけれども、若い人たちはみんなかわいい若いMOBを買っていくのは知っていたから、僕に目もくれないと思っていたんだ。
「スノーゴーレム?」
「ああ、雪だるまとも言うんだけどね」
 迷わず僕の目の前に来たその人は、店主と会話を始めた。店主はスノーゴーレム、またの名を雪だるまという僕の取り扱い方法を説明している。僕は触れたものをほとんど雪にしてしまうから、僕の飼育カゴは雪まみれだった。
「飼います」
「え」
 女性の発言に驚いたのは、店主だけではなかった。それから店主が何度も、本当に大丈夫かいと聞いている。すると女性は本当に花のように笑ってこう言ったのだ。
「でも、可愛いです、この雪だるまちゃん」
「ま、まぁ、それでもいいならいいんだが……」
 店主が安堵したような、複雑な表情をして僕を半額以下で女性に売った。すると女性はまだもう一人飼おうかな、なんて呟いて、僕の飼育カゴを片手に、店の中をぐるりと歩き始めた。
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