第10章 ベビーホグリンおんりー目線2
それからその人は立ち上がって手を洗いに行った。俺をオリに戻さなくていいんだろうか。疑問に思っていた矢先、向こうで何か聞こえてそちらに駆けつけると、飼育カゴから逆さまに落ちそうなぼんスケルトンを見つけた。
「ぼんさん、何してるんです?」
俺が話しかけると、ぼんスケルトンさんはよかったと騒ぎ立てながら、うっかり足を滑らせて落ちそうなのだと話した。
「だから頼むよ、おんりーちゃん! 助けて!」
「助けてと言われても……」
MOBからしたらその高さはかなりある。ベビーホグリンの姿のままの俺はますます届かない高さだし、ぼんスケルトンをキャッチ出来る程体はデカくない。
こうなると、あの人を呼ぶことくらいしか出来ないのだが……。
「あ、おんりーちゃん、どこ行くの?!」
「飼い主呼んでくる」
俺は来たところを引き返し、すぐに見つけた飼い主の足を見つけた。しかしその人はこちらに気づいていないようだ。どうしたらいいのか。ここは体当たりをして気づいてもらうしか……。
「あら、おんりー、そこにいたんだね」
その人はそう言って俺のことを捕まえようとしたきた。気づいてもらえたのなら手っ取り早いのだが、捕まるのはまずい。なんとかその手から逃れて走り出し、それから振り向いて、はよ来いやぁと誘ってみる。
「おんりー……?」
その人が歩き出したところでまたダッシュ。見るとぼんスケルトンは残り爪先わずかで落下しそうになっていた。
「あ、ぼんスケルトン!」
その人はすぐにぼんスケルトンを包み込んで助けた。その人の手の中で、ぼんスケルトンが何度もありがとうありがとうと言っている。
それから膝をついてその人は俺の頬に手を寄せた。
「ホグリンおんりーも、ありがと」
こちらの言葉が伝わっていないはずなのに、俺が何を言いたいのか分かった方がすごい。そのまま俺のことを撫でてくれて、本当に嬉しかった。次からは体当たりしない方法でコミュニケーションを取らないとな。