第6章 MEN豚目戦
「ずっと、気になっていたんですけど」と女は話し始めた。「この手乗り豚ちゃんだけ、飼育カゴオシャレですよね……? 飼育方法が、他の手乗り豚ちゃんと違うんですか?」
「あー、それはただの個性だよ」
と言いながら、主人は手乗り豚の飼育というより、俺の飼育方法をつらつらと話し始めた。材料を渡すと何か作ってくれることがある、と。
「へぇ、楽しそうですね……」
楽しそう? 確かに俺を見て面白いという人間はたくさんいたが、楽しそうと言われたのは初めてだ。ちょっとびっくりした。
触っていいですか、と主人から許可を取り、女は俺の飼育カゴに手を伸ばしてきた。そんなことで俺は懐いたりしないぞ、と身構えていると、女は俺ではなく、俺の作った小物を拾ってじっと見据えた。
何してるんだ、この人間……?
意図が分からずにじっと女を見上げていると、こちらに気づいたのかにこりと笑った。それから俺の作った小物を元に戻して、あなたは器用なんだね、と声を掛けてきた。
いやいや、これくらい大したことはないんすよ。そう思ったが、人間の彼女には伝わらないことには気づいて、どこかもどかしさを感じた。しかし、彼女はくすくす笑ってこう言ったのだ。
「謙遜してるの? とてもいい子ね」
え、伝わった?
それには俺にも驚いてそこから動けずにいる間に、彼女は主人の方へ振り向いて、この子を飼いたいですと言い始めた。
「いいのかい? 確かにそのMOBはいい子なんだが」
「この子がいいです」
そうして俺は、今ではこの人間の女性と一緒に暮らすことになったって訳である。