第3章 上陸
クローゼットの中は似たような色が並ぶ中に何着か黄色を見つけた。
艦の色、そしてその艦の色を選んだのはローくんたちと暮らしていたおじいさん。
なんだかその黄色がクローゼットに並んでいることに心がふんわりと暖かくなる。
艦の色を選んだのがローくんだったら、黄色が好きなのかな、って1番に思いそうだけど、そうじゃないってことが心を暖かくさせる。
おじいさんの選んだ色を大事にしているんだ、と。
そんなことを考えていると、ローくんがその中から1着、手に取ってわたしに見せてきた。
「ん?」
「着とけ。無いよりは良いだろ。他のはマークが入ってるから島に降りるにはな」
「え、あ、いやでもまだ借りた上着、返せてないし…」
「…あれも別にわざわざ洗って返そうなんざしなくていい。あの時しか着てないだろ。そのままでも────」
「や、やだよ!そのままは!!」
思わずちょっと声が大きくなってしまった。ローくんは出したトレーナーをわたしの膝にのせる。
でもそのまま返すなんて……あれを貸してもらった時、ショーツしか身につけてない状態で、その他は直で上着を着ていたから……汚れとかその、わたしの汗とかがダイレクトだったわけで……それをそのまま返すなんて絶対嫌だ。
「別に嗅いだりなんかしない」
「へ?」
嗅ぐ??聞き間違いかな?
「……とにかく洗わなくて良いし、ソレは着とけよ」
「や、洗う。絶対洗うから待ってて。……これは、ありがとう……」
立ち上がり、外套を脱いで珈琲カップに当たらないように畳んで置く。
そしてたった今借りたトレーナーを頭から被り袖を通す。
「……ここで着るのか」
「ん?わ、あったかい!1枚着るだけでも違うね〜!」
例によって袖と裾が長く指先は出ないしおしりまで隠れるサイズではあるけど、それがまた暖かさを高める要因のひとつかもしれない。
それに袖口のしぼりがしっかりしているから少し上に引っ張って手を出せば捲らずとも多少は手先が出てる状態でキープできる。
「ふふ、貸してくれてありがとう」
「ああ」
まだ借りた服返してないのに借りるなんて申し訳ないって思ってたけど借りちゃった。