第2章 出航
「じゃあ、わたし食堂に戻るね」
「ああ。でも酷使するなよ。出来るだけ安静にしとけ」
「分かってるよ〜けど骨が折れてるとかじゃないんだし大丈夫だよ」
「骨が折れてたら部屋に縛り付けてる」
「ヒェ、、、折れてなくて良かった…」
片方だけ口角を上げて悪どい笑みを浮かべるお医者さんから逃げるように医務室から退散した。
そのまま食堂へ戻り、ペンギンくんに声をかける。
「わたし、何したらいい?」
「おー、終わった?じゃあテーブル拭いといて。これ消毒液と布巾な」
「は〜い」
「そこはアイアイだろ〜」
「アイアイ」
手を挙げて返事をすると「それでよし、」とペンギンくんが笑った。まだまだアイアイという返事が染み付いてないなあ。フル活用しよう。
「それにしても…ちゃんと消毒液使って拭くんだね」
「おれらのキャプテンはお医者さんだからな。他の部屋とかもそうだけど、出来るだけ除菌するようにしてんだよ。病気とかでも予防で防げるものは防ぐってな」
「なるほど〜」
さすが、海賊である前にお医者さんだ。そんじょそこらの海賊とは清潔感が違う(そんじょそこらの海賊は汚いというのは偏見かもしれないけど)。
テーブルを全て拭き終わると今度はまだ屍のようにぐったりと眠り転げているみんなを起こして支度させるように仰せつかった。
1人ずつ起こしながら水を飲んでもらう。
なかなか1回で起きる人は居らず、声をかけながら顔や胸と肩の間あたりをポンポンと叩くようにしてようやく起きてくれる。
そしてその度に起きたクルーたちはわたしの顔を見て驚いたような顔をして「ああ、」と思い出したように水を飲む。
多分まだわたしの顔に見慣れてないんだろうな、と思いつつ朝支度へと送り出す。
ペンギンくんとわたしを残し、食堂から誰もいなくなったあと、しばらくしたら今度は朝ごはんを食べにみんなが戻ってくる。
イッカクちゃんも「おはよ」とわたしに声をかけてくれた。
イッカクちゃんと並んでトレイにご飯を並べ、隣り合わせに座ってご飯を食べていると、「おれらもここで食べよ〜」と言いながら人が集まってくる。けれど何故かわたしのイッカクちゃんがいない方の席は必ず空いたままになっていた。