第2章 出航
シャワー室には個室状態に区切られ、シャワーが設置されたスペースが3つある。そのどれにも人が居ないことを確認し、まるで泥棒のようにそそくさと個室に入る。
わたしの身長では頭も出ないけど、足元と頭の方は人がいるかいないかの判断が出来るように、仕切られた壁よりも扉が少し低い。
包帯が巻かれた手首はそのままに、出来るだけ両手を下げないように気をつけながら頭からお湯をかぶる。
順番にシャワーを浴びていると、順番にタオルで拭いてもらったことを思い出し、お湯の温度以上に身体が熱くなってくる。
……わたしって変態なのでは?
一通り浴びて、最後に「後で自分でする」と言っておいて何も出来ていなかったお股を手首を濡らしながら手で綺麗にする。
誰に触られたかを意識しないように、無心で…。
しかし、無心でいようとしても未遂で終わったけど、太ももからショーツのラインまでローくんの手が伸びたことを思い出してしまう。中を触られた訳では無いのに…。
全身隈無く流し終えて、バスタオルで拭き、着ていた服を置いている脱衣場へ行くためにバスタオルを胸元から体に巻く。
さすがに誰もいないとはいえ裸で歩き回るのは気が引けるし、共有スペースで今わたしがシャワー室に居ることはペンギンくんしか知らないというリスキーな状態。
服を置いている棚に向かう途中で、目的の所しか見ていなかったせいで、『避けて歩く』ということが疎かになり、
ガシャンッ!!!!
と、足元にあったカゴに盛大に脛をぶつけた。
「〜〜!!!!」
あまりの痛さに声も出ない。
反射的に脛を抑えた時、今度は廊下と脱衣場を繋ぐ扉から音がした。
「誰かいる?大丈夫か?」
シャチくんの声がした。
大丈夫!と声を上げようとした時には棚からひょっこり顔を出すシャチくん。
「………」
グラサンでどこを見ているかハッキリしないけど、目、合ってる?かな?
「…大きい音立ててごめんなさい」
「、はっ!いや、!こっちこそ悪ィ!」
シャチくんが勢いよく後ろを向いた。何を謝ってるのか分からないけど……あ、
「ごめん、お見苦しい姿を…」
「いやいやいや!ありがとうございマス!」
「?」
何故か感謝された。