第2章 出航
やめろ、と言われたのでちゃんとやめる。寝起きにイラつかせたら可哀想だしね。
ローくんも起きたから、起こさずに起き上がるミッションは遂行しなくて済んだ。
未だ重たい体を起こし、左腕を解放してあげつつ、足の方からローくんを跨ぎ(あら、ローくん靴履きっぱじゃん)、改めて靴を履き直す。
デスクにある時計を見させてもらうと8時になっていた。
そろそろみんな動き出すだろうか?それとも昨日のどんちゃん騒ぎでまだ寝てるかな?
食堂の様子を見てから女部屋に行って朝の支度をしようかな。イッカクちゃんが起きてると良いけど…
「それじゃあ、お邪魔しました」
「待て」
扉を開けようとすると呼び止められた。何?と首を傾げるとわたしの手首を指さした。
「支度した後、手当し直すからおれの所に来い」
「アイアイ」
ペンギンくんたちがしてる返事を真似すると、ローくんは「フッ」と笑った。
船長室を出て階段を降りて食堂へ向かう。
「…うわ」
食堂には何人かが未だに死屍累々とでも言うように寝転がっていた。
そんな中、厨房でペンギンくんが忙しなく動いている。
「ペンギンくん、おはよう」
声をかけると「リア!おはよ」とにこやかに返してくれる。
ペンギンくんも昨日たくさん飲んでるようだったけど…
それを伝えると、キツく無いわけじゃないけど、と話す。
「でもおれがメインの食事担当だしね。リアこそ大丈夫だったか?」
「うん。酔うの初めてだったけど二日酔いはしてなさそう。ぐっすり眠ったよ」
「え、キャプテン寝かせてくれたのかよ」
「ん?うん?わたしにベッド貸してくれて、ローくんは椅子で寝てて…ベッドで寝直してもらったよ」
「…あ〜っと…キャプテンにベッド譲ってってこと?」
「うん。あ、でもベッドお返ししたつもりだったけどわたしも一緒に寝かせてもらっちゃった」
あはは、と話すとペンギンくんはご飯の準備する手を止めて首を傾げた。それに合わせてわたしも首を傾げて「どうしたの?」と聞く。何か不思議なことでもあっただろうか。
「キャプテン、鋼の精神すぎん…?」
「ん?」
「や、なんでもない…」
ペンギンくんはご飯の準備を再開する。