第2章 出航
リアを起こし、まだ飲むとごねるのを宥め、抱き上げる。
大人しく首に腕を巻き付けてきたのを愛しい、と感じてしまった。
久しぶりに再会して、それどころかその存在を再会するまで思い出してもなかったおれが何を言ってるんだと自分でも思うが、自覚してしまえば簡単だった。
ドス黒い感情が湧くのも、あの海賊共を殺してやると思ったのも全てに合点がいく。
ガキの頃のあの浮き足立つような感覚は。
あの頃にすでにおれは、言葉にするのも恥ずかしいが、リアに『初恋』をしていたのだろう。
今のこの感情は、あの頃に止まったものが再会したことで再び動き出した『初恋』なのだろう。
「キャプテン、リアのベッド、まだ寝れる状態じゃないからアタシのベッドに──」
「おれの部屋に連れてくから大丈夫だ」
おれの言葉にクルーが全員固まった。
「え゛、キャプテン、まさか、、、」
「そうかな、とは思ってたけど、、、」
「リアの感じ的にギリまだかなって思ってたんだけどな、おれ」
口々に言うクルーを無視して自分の部屋へと歩みを進めた。
部屋へと歩いているうちに、首の後ろで結んであったリアの手は背中の方へと力なく垂れていた。
能力で扉を開けずして部屋の中に入り、他のクルーのベッドよりも大きい自身のベッドの上にゆっくりと慎重かつ丁寧に、両手首の傷に障らないようにリアを仰向けに寝かせる。
イッカクが艦に戻ってきた時にリアは自分の服に着替えた。パーカーは洗って返す、と言われてまだ手元に戻ってきていない。
リアの今の服装はタンクトップにシャツ、下はジーンズと再会した時の服装に似ている。
サイズの大きいシャツのボタンを上から3つほどを開けていて襟首がズレてタンクトップの脇辺りの肉が少し盛り上がったようになっている様が見て取れる。
柔らかそうなその肉を触りたくなり、寝ているのを確認して手を伸ばす。
この部分は胸ではない。だから大丈夫、と心の中で勝手な言い訳をする。
ふに、
「ッ、」
その余りにも柔らかい膨らみに息を飲み、全身の毛穴が粟立つように途端に汗が湧き出た気がした。