第2章 出航
上手く言えないけど、強いて言葉を見つけるとしたら、同じ土俵に立てていない、だろうか?
「…いいのかな、それで…。わたしだけそんな守られてる、みたいな……」
「あいつらは自分の身は自分で守れる。最初からそのつもりで、その覚悟を持って一員になった奴らだ。だけどお前は違う。特別な力を持っていてもお前はまだ自分で自分を守れる所まで来てないだろ。いつかそうなればいい」
夜になり、みんなにも髪の説明はしたし、着替えて帽子もかぶってないわたしの頭をローくんは雑に撫でた。
「お前を誘拐したのは……」
「?」
撫でるのをやめた手は、わたしの頭を掴むようにしてわたしの顔をローくんの方へと向けないようにさせた。
「お前がおれの預かり知らぬところでどうにかなるのが嫌だったからだ」
風の音に邪魔されながらも聞こえたその言葉に胸がジンとする。
そう思ってもらえるってことは、わたしはローくんの何かにはなれたってことかな。
どうでもいい存在だったら、そういう風には思って貰えない、よね?
ローくんの心の内側に入れたような、そんな気がして嬉しくなった。
「ふふ…そっか」
「親の話もラミの話も一番伝わるしな」
昇華したと言えど、やっぱり思い出話はしたいもんね。
うん、と返事をしてまだ残るお酒の続きを再開した。
ぐわん、ぐわん、と身体が揺れる。
いつの間にか目を閉じていたようで、その揺れに重たい瞼を上げる。
「おい、リア」
「…んん…?」
焦点の合わない目が覗き込んでくるローくんの顔を捉えた。
揺れはローくんがわたしの肩を掴み、起こすために揺らしていたかららしい。
右頬に違和感を感じると、ピッタ、と頬が何かから離れる感覚があった。どうやらローくんにもたれかかっていたようだ。
「もう部屋行くぞ」
「ん〜…」
持っていたはずのお酒が入ったグラスを探すと、ローくんの右側に2つ、グラスが並んでいた。
形が違うため、自分が持っていた方を覗くと、ちゃんと飲み干していたのか中身は空だった。
「まだわたし3杯しか飲んでなかった気がする……まだ飲みたい……」
うつらうつらと自分の意思とは関係なく頭が揺れる。
けれど楽しい宴なんだから、まだ飲まないと損では?という考えが頭をもたげる。