第2章 出航
懇願するようにみんなの目をそれぞれ見て言ったけれど、ローくんが言った時のような返事はなかった。
……わたしキャプテンじゃないからそれは当たり前か。
しかし、ムスッとした顔のローくんがみんなに目配せをすると「アイアイ……」と小さく返事が返ってきた。
その威勢のなさにちゃんと守ってもらえるだろうかと一抹の不安を抱えるけども、「じゃあ誘拐したリアの歓迎会しよう!」とペンギンくんが立ち上がると、すぐにみんながワァー!と湧き上がった。
誘拐した人物の歓迎会って……と笑っていると、ペンギンくんたちが「リア、何食べたい?おれら作るよ!」と周りを囲んでくる。
「食べたいもの…思い浮かばないなあ……嫌いなものも特にないから、みんなが好きなのでお願い!」
「え〜〜〜欲がないなあ〜!」
「やっぱ肉…」
「それはベポが食べたいもんだろ」
「いや、肉はみんな食べたい」
宴だ〜!!!と大盛り上がりしながらみんなは準備をするために散っていった。
歓迎会と称した宴をするため、潜っていた艦は浮上し、甲板と食堂を繋ぐ扉を開け広げ、両方に豪勢な料理が並んだ。
イッカクちゃんが取りに行ってくれた荷物から新しい下着と服を取りだし着替えたわたしも少しお手伝いをした料理たち。
すでに開幕して時間が経っており、料理の準備を夕方過ぎから始めたため、時計の針が0時をすぎるのはあっという間だった。
どれだけ買い込んだんだ、と目を丸くするほどみんなはどんどんお酒を流し込んでいく。
宴が始まって最初の方に余興として、念力でベポくんを浮かせたら大好評で(ベポくんはちょっと怖がってたけど)、そのあと何人も浮かすことになった。手首が痛んだのは内緒。
さすがにベポくんほどの大きさを持ち上げたことは無かったし、連続で力を使うこともなかったため、わたしは今、甲板で風に当たるようにして座り込んでちびちびとお酒を飲んでいる。
力を連続でたくさん使うって、体力を消耗するものなんだなあ。
そんなことすら知らなかった。
体力を鍛えたらもっと疲れにくくなるかな。
息を吐いて、すっかり暗くなり星が見えるようになった空を見上げる。
視力は良い方では無いけれど、それでもわかるほどに遮るものはない───────と、思っていたら遮られた。