第2章 出航
「なんでかな。女将さんたちに良くしてもらったけど、離れ難いってほどでもないの」
「……そうか」
うん、やっぱり涙はすぐ止まった。ハッキリした理由は分からないけど、なんとなく感傷的になってしまっていたのだろう。
「ん、大丈夫」
ほら、と笑ってみせると、ローくんはもう一度「そうか」と言ってわたしに背中を向けた。
「カンファレンスルームに集合するように言ってる。そこで説明しろ」
「分かった」
確かカンファレンスルームって「この艦じゃ作戦室とか作戦司令室とか…わかりやすく言えば多目的室!」ってペンギンくんが言ってたかな。
わたしは先を行くローくんを追いかけながら初めて見る、潜水艦がその名の通りに海へ潜っていく、窓からの景色に思わず息を飲むように止めた。
「と、いうわけで、これからよろしくお願いします」
説明をしてから挨拶に頭を下げて、元の姿勢に戻ってもすぐにはみんなのポカン顔は戻らなかった。
「えっと……何か披露した方がいい…?」
横に立つローくんを見上げると、ローくんは「もう説明したし別にいんじゃねェか?」とあっけらかんに言った。
しかしポカン顔のみんなに向かって、至極真顔で「今の話、」と切り出した。
「絶対何があっても何がなんでも他言するなよ。拷問されようがなんだろうが絶対に漏らすな」
と言った。
その言葉にみんなはすぐに顔に活力が戻り、ハッキリと「「「アイアイ!!」」」と返事をした。
いや待って待って、
「駄目だよ!」
思わず声を上げる。
「何言ってんの?!みんなの無事の方が大事に決まってるじゃん!!」
妙な約束をさせるローくんを精一杯睨みつける。それに対し、ローくんは訳が分からないような顔をしていた。
「もし、わたしのこの話のせいでみんなに危険が迫って、命の危機に陥ったら、迷わず話してください。話しても助からないかも、とかあるかもしれないけど……みんなの判断にはなるんだけど……話して助かるんであれば迷わず話してください」