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【OP】GIFT

第2章 出航




「……ローくんが話していいって思うんだったらわたしから説明させて?」
「ああ。出航してから全員集める」


また『さよならをする人』1人くらいになら、と我儘で話した事をまさか誘拐されて1人どころか20人に話すことになるとは。人生何が起きるか分かったものじゃないな。









そして、ついにベポくんの「キャプテン!ログ溜まったよ!」の声で出航の時間がやってきた。


ローくんに言われ、食堂にいたわたしは開かない艦の窓から外を見る。
太陽が水平線に沈もうとしている。
何度こうやって島を出たことか。薄情かもしれないけど、あれだけ良くしてもらった女将さんたちとの別れもそう悲しくない。
住み慣れた、と思ってもいずれその島も出なきゃいけないと思いながら生きているせいか、いまいち身が入らないというか……第三者になって外側から自分を見ているような感じだ。

それでもなんとなく毎回、離れる島を甲板から見ていた。
まるで『いつもの行動』のように食堂から甲板に出れる扉の前に立つ。そしてその扉の様相を見て思い出した。
ああ、そうか。この船は潜水艦だった。
扉は丸い舵のようなものを回してロックをかけるもので、今はロック状態になっている。

開けちゃダメだよね。
もう一度先程まで見ていた窓の方へ移動するとわたしの名前を呼ぶ声が聞こえた。
もうこの3日間で随分聞きなれた声。その声の主へ振り向くと、目が会った瞬間に相手が固まった。


「この島はそんなに離れ難いか?それとも今までもそうやって毎回泣いてるのか?」
「へ?」

ローくんに言われて、目の辺りを触るとたしかに濡れていた。
自分が泣いていることに気付かないなんて、そんなことあるのか……と思ったところで、そういえば初日にローくんの話を聞いた時も話に没頭していて自分の涙に気づいていなかったことを思い出す。

ローくんに会ってから、今までこんなに自分は泣き虫だっただろうか?と思うほど泣いている気がする。

「……今まで、島を出る時、泣いてた覚えないんだけど……」

幸い、涙は静かに流れてくるだけで、嗚咽するほどじゃない。多分すぐに止まる。




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