第2章 出航
「パンツだけよりマシでしょ」
「た、たしかに…」
見えてないけど履いてはいるという心持ちは大事かもしれない。少なくともショーツしか履いてないというソワソワ感はなくなった。
「リアの荷物、持ってくるからそれまでソレ履いてな」
「うん、ありがとう!荷物のことも宜しくお願いします」
わたしが住んでいる(もう住んでいた?かな?)アパートの住所を伝えると、「先に酒場の女将さんたちに手紙渡すから、大丈夫そうだったら女将さんについてきてもらって荷物の確認しながら詰めてくるわ」と言ってくれた。
あの海賊達の行く末を知ったものの、『誘拐』をされたらしいわたしはどこにいればいいか分からず、とりあえずわたしのために出かけるイッカクちゃんの後をついて行くように再び甲板へ出た。
するとすぐにローくんが近付いてくる。
「……どうした?」
「え?」
「何かあったか?」
何かあったか?なんて聞かれるような顔でもしてたのかな…?何か、何か……あ、
「イッカクちゃんの服を借りようとしたの。けどブラジャーはわたしより大きくて、下はウエストが大丈夫でも太ももがわたしの方が太くて……」
自分で言っておいて悲しくなってくるなあ。スタイルの違いに…。
これしかわたしも服も無事に済みそうなのが無かった、と借りている上着の裾を捲り、先程イッカクちゃんに貸してもらって履いているショートパンツを見せた。
が、ローくんの返事がない。
なんで?と思い、顔を上げるとローくんはわたしを見ているようだけれど、視線は合わなかった。その視線はわたしの顔よりも下に注がれていた。
「……?」
その視線を追ってみると、多分ショートパンツを見ているみたい。
あれ、もしかしてこのショートパンツ、イッカクちゃんも履いたことなくて見覚えないとか?
それか内緒にしてたショートパンツとか?いや、内緒にするショートパンツってなんだ?
分からないけど、なんとなく上着を捲っていた手を離した。
「えっと……とりあえず無防備じゃなくなりました…?」
「……変わんねェじゃねェか」
ようやく喋ったかと思ったら……。まあ、上着の裾からあまり見えないもんね、ショートパンツ。