第2章 出航
リアは子供の頃もそうだったが、すぐ赤面する。汗っかきだと自分で言っていたが、今もそれは健在のようで、目隠しのタオルを取った時、一番に目に付いたのは赤面するリアだった。
拭いていない顔には薄らと汗が滲んでいて、妙に艶やかだった。
恐らくあの時のペンギンはそのリアの顔も見て『そういう事をした』とでも思ったのだろう。
ペンギンにはリアの生脚だけでなく、あの顔まで見られたという事実に気に入らない以外の感情まで沸きそうだ。
リアもリアでたったの3日でペンギンをかなり信頼していそうだ。おれとの壁にするためとはいえあの格好であそこまで引っ付くとは。
早々にリアのあの危機感の無さと貞操観念をどうにかしねェと……。
「……よし、これでいいかな……。イッカクちゃん、書けたよ」
「ん。じゃあ預かるわ」
お願いします、とイッカクちゃんに女将さん達宛の手紙を渡すと、「そうだ、」とイッカクちゃんが閃いた声を上げた。
「リア、あたしの服、着てみる?」
「え?」
「だってその下、パンツなんでしょ?キャプテンのパーカーじゃ心許ないだろうし」
その下、と指をさされて条件反射のように裾を押さえた。
「……うん。出来れば貸してもらいたいかも……」
「オッケ〜!じゃあちょっと急いで女部屋行こ」
早歩きで女部屋へ向かい、中へ入るとすぐにイッカクちゃんは自分のロッカーを漁る。「ブラもあるけど」と出してくれたけど、明らかにわたしの胸よりも大きそうだったので気持ちだけ受け取り、物はお断りした。
ボトムスはデニムの長ズボンやショートパンツを数枚出してくれたので、早速履いてみる。
が、悲しいかな、太ももで引っかかり、何とか太ももをクリアしても動いたら破けてしまいそうなものばかりだった。
ウエストはピッタリなんだけど……わたしの太ももは本当に『太』ももなんだ、と鼻をすする。
「……まあ、ほら、これなら……」
あらら、と困り笑顔のような表情を浮かべてイッカクちゃんが渡してくれたのはウエスト部分がゴムで、両サイドにスリットが入ったショートパンツだった。
かなり丈が短く、ローくんのパーカーの下に履いてもパーカーから見えるか見えないかくらいだった。