第2章 出航
ローくんは自分の指示を船員たちが欠陥なく遂行したことに満足したのか、向こうの船を一瞥してより一層笑みを刻んだ。
「キャプテン、これからどうする?」
後ろについていたペンギンくんが聞く。
他の船員さんたちもローくんの元へ集まる。その隣にいるわたしも必然とその中心に居ることになり、お尻まで隠してくれているローくんの上着の裾を握りしめた。
「ベポ、あとどれくらいでログは溜まる?」
「あと2時間もないかな」
その言葉を受けて空を見ると陽が真上を既に過ぎていて、じわじわと西日に変わってきていた。
女将さんたちとカフェにいた頃には12時を過ぎていたと思うんだけど……意外と経ってたんだ…。
「それまでに出航準備を完全に整えろ。それと数人、あの海賊が破壊した所の片付けを手伝え」
「「「アイアイ〜!」」」
他にもそれぞれの船員に細かい指示をとばしたローくんに「ねえ、」と声を掛ける。
「わたし、女将さんたちに何もお礼言えてないし、荷物も取りに行きたいんだけど……」
「お前は出航まで1歩たりとも船の外に出さない」
「え、なんで?」
女将さんたちにはお世話になったし、何より、勧めてもらったようにハートの海賊団と共に島を出ることを伝えたいのに……。それに荷物だって。少ないとはいえ、下着も服も…ローくんの切り抜きファイルだって……。
「お前、力使ったろ」
「…うん」
「それならもう町の奴らに会わない方がいい。誰がどこで繋がってるか、話を漏らすか分からねェんだ。必要以上に危険を冒すな」
「でも…」
何故ローくんが、わたしが力を使ったのを知ってるか分からないけど、言う通りではある。
あの海賊たちがカフェを襲い、破壊したのもわたしのせいでもある。そしてその場で力を使ったから、そのせいで誰かの恨みを買った可能性もある。だとすれば今後、わたしの外見の特徴などを白の一族のことを知る海軍や海賊に話す人がいないとも限らない。
ローくんはその事を『危険』と捉えているんだろう。
反論出来ずにいると、「じゃあ、アタシが行ってこようか?」とイッカクちゃんが来てくれた。
「手紙書きなよ、渡してくるから。あと荷物も取りに行ってあげる。女のアタシなら荷物詰められても構わないでしょ?」
「いいの?」