第2章 出航
「だって今これ以外に服ないもん。ローくんこそ服着たら?」
どう見たってわたしよりローくんの方が無防備だと思いますけど?さっきからわたしはあなたをロクに見れないんでいるんですよ、と心の中でごちる。
わたしの言葉にローくんは何か言いかけたけど、また舌打ちをしたと思ったらパッと姿を消し、すぐに裾が長くフードのついた黒いコートを着た状態でパッと急に姿を現した。
着てはいるけれど、インナーは着ておらず、前を開いたままなのでわたしとしては依然ロクに見れないままだ。
「これで文句ねェだろ」
「前、閉めれないの」
「……」
「ブフッ」
わたしの問いに答えないローくんと何が面白かったのかペンギンくんが吹き出した。
「行くぞ」
そう言いながら、甲板の方へ歩き出したローくんはペンギンくんの背中からわたしをひっぺがし、わたしの肩を抱くように腕を回し、大股で歩いて行く。明らかにわたしの方が足が短いので小走りのようについて行くのに必死だ。
甲板へ出ると、他の船員さんたちもいて、もうひとつの船の方を見ていた。
何人かがまだ向こうの船に残っているようだ。
そのまま船の手摺まで行き、あの海賊たちの船を見ると、その甲板に木樽や木箱、麻布などが距離をあけてたくさん置いてあった。
それぞれがガタガタと動いている。
…もしかして。
「あ、あれって…」
隣のローくんを見上げると、わたしの言葉にニィ、と不敵に笑う。
「バラしたのを詰めさせた」
「ヒェ……」
あまりの衝撃に喉が狭まった。
つまりあの蠢いて見える物の中にはあの海賊たちがそれぞれ切断された状態で入っている、ということ。
「パーツごとに詰めたからもし中でくっついたとしても手と手、足と足、とかになるから五体満足の人間にはならねェよ」
隣に来たシャチくんがニカッと笑った。
昨日まではみんな優しい、良い人達という印象だったけど……
か、海賊だ……!!