第2章 出航
「…まだ下拭いてねェ」
ボソッとローくんが言う。何で分かるの?と一瞬思ったけど、そりゃあ、わかるか。……お股とか…ね…他の部位とは違う動かし方しないと拭けない…よね?
「そ、れは、自分でやる、から…」
「強く擦るだろ」
「だ、大丈夫!上着着てても拭けるところはローくんに見ててもらえばいいし!」
「……」
ローくんはようやく目隠しを外した。ジッ、と見てくるけどそんな見たってここだけは譲れない。胸とお股じゃ話は変わってくるでしょ…。
桶に入ったままになっていたタオルを絞ってもらい、それを受け取る。
強く擦ることを懸念されてるのだから、さら〜っと拭けばこの恥ずかしい状況は終わる。だからすぐに肘から下、太ももから拭き、ちょっと失礼して靴下と靴を脱いで足先まで拭かせてもらう(人様に絞ってもらうタオルで足先まで拭くのは悩んだけど)。
「はい、おしまい!タオル、何回も絞ってもらってありがとね」
「…ああ」
ローくんはタオルを受け取り、そのタオルをジッと見つめる。タオルまでも見つめるの?自分の身体を拭いたタオルをそんなまじまじと見られるのもちょっと恥ずかしいんだけど…。
と、居心地悪くなりかけていると…
「股、触られてたろ」
「え゚ッ」
まさか蒸し返されるとは思ってなくて自分でもどうやって出したのか分からないほど変な声が出た。
驚くわたしを気にもとめず、タオルを構えるローくん。いや、なんでそんなグイグイ前に来るの…!
ローくんがわたしと目を合わせたまま、わたしの右側に左手をついてベッドが鳴る。タオルを持つ右手は太ももに置かれ、そこからじわじわとわたしのお股へ近づく。上着の裾を両手で力強く抑えてその進行を阻もうとしてもするりと入ってくる。
「ま、って、」
その手がついにショーツのラインまで来た───────
コンコン
その音にビクッと身体が硬直する。
「キャプテ〜ン、詰め終わったんだけど次どうする?確認する?」
扉の向こうから聞こえたのはペンギンくんの声だった。
ローくんは何故か軽く舌打ちをして「今行く」とタオルを桶に掛けて椅子から立ち上がり、扉を開けた。
「あれ、ローさんまだ服着てなかっ────あ、なるほど、お邪魔しました」
ベッドの上で硬直するわたしを見て、ペンギンくんは何故か納得した。