第2章 出航
「拭くぞ」
「…うん」
タオルがわたしの身体に当たったことに気付いたのか、ローくんは身体を拭き始めてくれた。
鎖骨をなぞる様に拭いてくれるが、気を使ってくれてるのか力が優しすぎてくすぐったい。
「っん、ふ」
そのくすぐったさを我慢しようと思っていると声が漏れてしまった。
無意識のうちにローくんの左手を握っていた右手に力が入る。
「〜〜っ、あの、もうちょっと強くても、だいじょうぶ、、」
「…わかった」
先程より力が入った拭き方になり、いくらかくすぐったさは軽減された。
「これくらいか?」
「うん、ありがとう…」
ローくんの右手を少しずつ、添えた左手で拭いてもらう場所を変えてもらう。
な、なんだろう…良くないことをさせてる気持ちになってくる……。
仕方ないんだけど、目隠ししてる人に自分の身体を拭かせる(拭いてもらってる)って傍から見たらどうなんだろう……と、思案していて、拭いてもらう所をよく考えていなかった。
不意にタオルが胸のトップを掠める。
「っ、」
ハッ、と息を飲む。
ローくんには気づかれてないようで、ローくんはそのまま拭き続けている。
しかし、わたしが手を添えているとはいえ、ローくんの手はまるで見えているかのように胸の形に沿ってアンダーラインの所まで綺麗に拭いてくれる。
おかげ(?)でわたしの大きくは無い胸がたぷ、と形を変えながらタオルを持つローくんの手に少しだけのる。
う、なんか身体を拭いてもらってるだけなのに……あの海賊に触られた時よりも変な感じがする。もちろん、嫌悪感ではない。
早々に胸からお腹の方へと移動してもらい、冷たくなったタオルをお湯につけて絞ってもらう。その間も目隠しをしている状態だったけど、桶を置いている場所を覚えているのか、ローくんはまるで見えているかのように手際が良かった。
「あとは背中だけ、お願いします」
「…わかった」
背中をローくんに向けてから言うと、わたしが誘導するまでもなくローくんは背中を拭いてくれる。
「…ありがと。もう大丈夫だよ」
そう言ってローくんのタオルを持つ右手を桶の方へ誘導し、ローくんの上着を着る。
拭いてもらってる間、違う意味で汗をかいたけどそれもかいたそばから拭いてもらったおかげで、不快感はない。