第2章 出航
驚く声を無視し、2人分の心臓を抜き、リアと位置を変えた麻袋に詰める。
「ままま待て、お前、あの女が何か分かってるのか?お前もあの店ではなくその女が目当てで行ってたんだろ??」
手下がやられて焦っているのか、大量の汗を流しながら船長の男が言う。構える銃も照準が完全にブレている。
「あの女は神の一族だぞ…!バケモンなんだ!分かってるのか!?」
「注射《インジェクション》ショット」
「ぐがあぁああああああ゛ッ!!!!」
男の正中線に合わせるように鬼哭を突き刺す。壁まで貫通させ、身動きが取れなくなったその身体にそのまま親指を突き立て、カウンターショックを見舞う。電撃の音と共に男が持つ銃が床に落ちた。
「うぐぁっ、!あああァァァ゛!!!」
「メス」
天を仰ぎ大口を開けて苦しむ男の心臓を取り出す。
このまま潰してやろう。
その手に力を込めた───────「ローくん、駄目」
トン、と背中に重みが当たる。
見ると、リアがおれの背中にくっついていた。
「ローくん、駄目。お願い…もう、そこまでにして…」
「こいつはお前を…」
顔を上げたリアは悲痛な表情を浮かべている。その顔を見て攻撃を止めれるわけが無い。そう思ったが、その悲痛な表情の理由はこの男ではなくおれにあった。
「ローくんはお医者さんでしょ?海賊の前にお医者さんなんだって、ペンギンくんたちが言ってたよ。だから、ローくんは命まで奪っちゃ駄目」
ジッと見つめられる。先程まで涙を浮かべていたその瞳は強い意志を宿しているように見えた。
その時、派手な音を立ててログハウスに見慣れたシロクマが入ってきた。
「キャプテン!!!」
その後ろから2人、クルーが続いて入ってくる。
「ワア!リア!!無事で良かった!!」
「何しに来た、ベポ」
「回収にだよ!詰めるものって言ってたからバラしたのを詰めるんだろうと思って3人で外の奴ら回収してきた!」
その言葉の通り、3人の手元にはかなり膨らんでいる麻袋が何個もあった。おれの言葉を正しく理解していて結構だ。