第2章 出航
どうにか拘束から抜け出そうと両手を動かしてみるも、がっちりと腕を拘束されていて何も動かすことも捻ることも出来ない。
こんな時に鍛錬していなかったことを後悔することになるなんて。
念力であれば本来の自力よりも力が強いはずだけど、念力が使えない状態では自力でどうにかするしかない。
けれど複数の男性に勝てるほどの自力はさすがに持っていない。
なんとか手足をばたつかせるも、抵抗虚しく引き摺られるように海賊たちに連れていかれる───────
リアに送り出されてから、食料や医療に関する備品など初日で足りなかったもの、消費したことで必要になったものを買って回る。
クルーがさほど多くないとはいえ、次の島までどれくらいかかるか分からない為、多めに購入していく。
「キャプテン、ギリギリまでリアと一緒にいなくて良かったの?」
ベポが言う。
昨日のことはペンギンたちが他のクルーにも話していた。
その場で奴らの船を沈めようと息巻く奴らもいたようだが、おれの指示じゃないということで一旦は鎮まったらしい。
そして今、あの海賊の船は停泊する場所を変えたのか、港にはなかった。ログも溜まってないはずだ、出航したってことは無ェだろう。
「あいつなら大丈夫だ。もう別れも告げてきた。港には来させない」
ギリギリまで一緒にいたらそのまま連れ去ってしまいそうだった。
リア本人がなんと言おうと、その意思関係なく、海賊らしく。
「でも…」
言い淀むベポをペンギンやシャチも見守る。
と、そこで突然島の中心の方から轟音がとどろく。
「なんだ?」
「土煙が上がってんな」
その方向から数人が走ってくる。
他の町のやつらが何事かと聞いているのがこちらまで聞こえる。
「昨日港に来た海賊たちだ!なぜか喫茶店を襲ってて!喫茶店の中にはまだ人がいる!!助けてくれ!!」
あの海賊達が喫茶店を?
何故……まさか…。
「キャプテン、あの酒場のおばちゃん、リアにお茶でもって言ってなかった?」
同じことを考えついたのか、ペンギンが言う。
「ああ」
「じゃあ、もしかしてあの海賊、リアを探して?」
「なんであいつらが喫茶店にいること知ってんだよ」
「それは…酒場の近くに潜んでたとか?」