第2章 出航
「この2人に触らないで。関わらないで」
次いで、怪我をしている大将と女将さんを自分の後ろへ、他のお客さんたちが隠れている場所へ移動させる。人目があろうと今はそんなこと気にしている場合ではない。念力のことが知られたっていい。他の人たちが傷つけられなければ。
あの海賊の船長の口ぶりからして、恐らく狙いはわたし。
白髪や銀髪は少なからず一族じゃなくてもいるから、神の一族もとい白の一族の話を知っているのだろう。
壁が壊され、店の中と外の境が分かりにくくはなっているけれど、海賊たちがいる店の外へ出る。
町の人たちの姿はない。建物内に避難しているのであればいい。
「わたしに何か用ですか」
身体が緊張と恐怖で震えだしそうなのを隠しながら、海賊の船長を見据える。
「おれァ、あんたが気に入ってなァ。おれのもんにしようと思ってなァ、探しに来たわけよ。ほんでこうして出会えたわけだ。運命ってやつだろこりゃあ」
「……」
海賊の船長が近付き、目と鼻の先に清潔感のない大男の顔が近付けられる。
何が運命だ。
どうすればこの人たちを他に被害を出すことなく追い払えるだろう。
この海賊たちのログポースはまだ溜まらない。
だとしたらこの島から追い出すことは出来ないのだろうか?
誰か海兵に通報してくれていれば、そのうち海兵が駆けつけて捕らえてくれるのだろうか。
そうなればわたしも身を隠さなければならない。なにせこの船長は白の一族を知っている。わたしのことをバラさないとも限らない。
と、考えていると─────
バツッ、ブチィ、と音がした。
スーっと素肌に風が当たる。
見れば、わたしが着ているシャツワンピースの前が乱暴に開かれ、下着が見えている。
「な、」
咄嗟に胸を隠すように両手で前を合わせた。
「ゲヘッ、胸はそんなに大きくねェが、抱き心地の良さそうな体をしてるなァ」
その言葉を合図に左右から別の海賊がそれぞれ腕を掴んできて、閉じていた前が再び露わになる。
「船長、ここから直で船に戻るとハートの海賊団にかち合うかもしんねェ!山の方から遠回りして戻りやしょう!」
「おれァもう船まで待てねェ。山で犯しちまおう」
ゲヒヒ、と笑いながら頭が下がり、わたしの胸の間をねっとりと舐める。
「ッ、」
気持ち悪さに息を飲む。