第2章 出航
「ありがとうございます…。…ちゃんと、考えてみます」
少しトイレに、と席を立つ。
ローくんたちに、ついて行く…
果たしてそれは受け入れてもらえることなんだろうか。
わたしはギフトという特殊な先天的能力を持ってはいるけど、戦いの経験が豊富なわけでもないし、航海の腕だってない。
ましてや白の一族を知っている政府や海兵の一部や海賊に狙われる可能性もあるお荷物だ。
もしついて行くことを話して、拒絶されたら立ち直れない気がする。
ローくんの滞在期間を伸ばすという提案を無下にしておきながら…って話なんだけど…。
トイレから出ようとした時、ミシミシ、と建物が軋む音がした。
その直後には悲鳴も聞こえる。
次いで様々な喧騒が聞こえる。
只事じゃないと思い、急いでトイレから出る。
するとそこは先程までの賑わいはなく、人々が息を飲む様子が広がっていた。
店内の柱や壁には銃や剣の跡があり、テーブルや椅子も散乱している。
歓談していた人達は皆、視線を同じところに向けて怯えたような表情をしていた。
その方向を見ると─────
女将さんが昨日の海賊たちに捕まっていた。
「っ!?」
わたしの姿に気付いた海賊の船長が「やっぱりいるじゃねェかァ!」と大声を上げる。その足元近くには肩口から胸にかけて血を流す大将の姿。恐らく傷口を抑えているのだろうけど、苦悶の表情を浮かべている。
女将さんの首に剣が当てられる。
とっさに手を差し出し、念力でその剣を女将さんから遠ざけさせ人がいない方向に飛ばす。
「?!なんだ、今の」
自分の手から無くなった剣が飛んだ方向を海賊が不思議そうに見る。
その海賊の後ろにはあの下卑た笑い方をする船長が木箱に座っている。
「何してんだァ?ちゃんと人質脅してねェとダメだろォ」
「いや、船長、あの女が…」
「アアン?」
大男がわたしの姿を捉える。
「やっぱお前、《神の一族》か?」
わたしはその言葉を無視してその船長の元へ突き進む。
まだ接触する前に両手で念力を使い、女将さんを拘束している海賊の両手を触れずして捻りあげる。
「ぐがっあ、!」
周りの海賊も何が起きているのか、目を見張っている。