第2章 出航
「夕方頃、お見送りに行ってもいい?」
「駄目だ。港には奴らもいるだろ。出来るだけ近付くな」
翌朝、女将さんに待ち合わせの時間を言われていないことに気づき、聞きに行こうと支度をする際に聞いてみた。
しかし玉砕。
「それもそうだけど〜…シャチくん達にもお礼言えてないし…最後にもう1回良くしてくれてありがとうって伝えたかったんだけど…」
「分かった」
「じゃあ、」
「おれから言っておく」
「そうじゃないじゃん〜…そうしてもらうしかないけど…」
どうにか伝えれないかな、と考えていると「じゃあな」とROOMを張り始めるローくんに焦る。
「え!ちょっと!」
「なんだ?」
「なんだ?、じゃないよ!もう会えないかもしれないのにッ…!」
自分で言っておいてその言葉の重みに尻込みする。
「……」
「…ごめん。今の無し」
フゥ、と息を吐いて落ち着かない気持ちを、焦りを押しとどめる。
「絶対に死なないで。出来るだけ怪我しないで」
「…善処する」
手のひらを上に向けるようにして両手を差し出す。首を傾げるローくんに「手、貸して」と言うとわたしの手のひらに重ねるように両手を差し出してくれた。
その両手をわたしの両手で包むように合わせる。
祈るように、その両手ごと手を合わせる。
「善処じゃなくて、絶対、だよ」
「…分かった」
「ん。わたしはどこにいてもハートの海賊団のみんなが元気で、無事でいることを祈ってる。ローくんの目的が果たせるよう応援してる」
合わせていた両手を解放し、目を開ける。
そして目を合わせた。
「はい、邪魔してごめん。行ってらっしゃい!」
「…フッ、行ってくる」
新聞には載らないような表情で笑ったかと思うと、次にはそこにローくんの姿はなく、代わりにまた小石がコロン、と転がった。
「ごめんねぇ。せっかく女ふたりでお茶しようと思ってたのに…」
「いえ、大将も一緒で嬉しいです」
「……」
ローくんが行ったあと、支度を終わらせて女将さん達が住む、お店の2階を訪ねると、タイミングが良かったようでそのまま町の中の方にある喫茶店に来た。
「昨日のことがあったからって自分も行くって聞かないのよ」
バシッ、と強めに肩を叩かれた大将は少しムスッとした。