第1章 初恋
いわゆるホールスタッフ、フロアスタッフ…のわたしは接客担当で2人がお酒や料理に集中できるように立ち回る役割。
だから開店前に店に行って、大将と女将さんがしなくて済むように料理やお酒以外の開店準備をする。
「おはようございます」
「おはよう!」
「…おはよう」
裏口から入って挨拶すると、女将さんが明るく挨拶を返してくれる。
そしてその後ろからボソッと大将も返してくれる。
明るい女将さんと、職人気質な大将。
一見正反対な2人は、最初こそ「なんでこの2人が…」って思うけど、ある程度一緒に働いてみると「ああ、なるほど。この2人だからか」と納得するほどバランスが良い。
「リアちゃん、今日は海賊が港に停まってるって知ってる?」
「あ、はい。買い物に行った時に話してる人がいて…」
仕事用のエプロンを身につけていると、厨房から女将さんがやって来た。
「一応ここも港に近い方だし、酒場だし…海賊の人達が来るかもしれないから、危なそうな人が来たらすぐ教えてね。怪我しちゃ大変よ!」
「わかりました」
女将さんを安心させるように笑って、開店準備に戻る。
床を掃いて、乾拭きし、椅子を下ろしたあとは台拭きでそれぞれのテーブルを拭く。
壁際には1席、3人掛けのソファがある。
そのソファの隅まで食べカスやゴミがないかを確認する。
フロアに見落としがないかを確認した後はトイレ掃除。
トイレは2つあるけど、それぞれ開店した後にたくさんのお客さんが使用するからトイレットペーパーの消耗が激しい。中には散らかしていく人もいるし…。
「リアちゃん、そろそろお店開けれそう〜?」
厨房から女将さんの声がして急いでトイレ掃除の後始末をして顔を出す。
「大丈夫です!開けますね!」
「おねが〜い!」
お店の表の出入口の鍵を開けて、看板を出し、出入口の扉の外側に『OPEN』の札を掛ける。
中へ入ろうとした所で、常連のおじさん達が「お、開いた開いた」と言って店内へ入っていくのを扉を開けながら「いらっしゃいませ!」と声を掛ける。
よし、今日もきっと忙しくなるなあ〜!