第1章 初恋
そのまま、カサついた手が優しく赤く擦れた箇所を撫でる。その力加減がくすぐったい。
…やっぱり、ローくんに触られても気持ち悪くない。
ローくんは無言のまま、視線を落としている。
「……」
「ローくん?」
その視線を拾うように覗き込む。
その目が少し躊躇うように迷うように揺らいだ。
「…リア、お前…」
「??なぁに?」
歯切れが悪そうに話したかと思うとまた黙ってしまった。
どうしたんだろう。
そう思う頃には頭にあの海賊の顔や手がいないことに気づいた。
今わたしの頭の中は目の前にいるローくんでいっぱいになってる。
不快さも忘れれそうなくらいに。
なかなか続かない言葉の先を待っていると、「早く寝ろ」と今度こそ頭を枕に誘導された。
されるがままに枕に頭を預け、ベッドに体を沈ませる。
続いてギシ、と体の横側が少し傾くように沈み、ローくんが寝転んだのがわかる。
「明日…もう今日だけど。島を出るんだよね?」
「…夕方頃にはログが溜まるはずだ」
「そっかぁ〜…3日間が短く感じたなあ」
明日の夕方頃にはもう港にあの黄色い潜水艦はないのか。
ローくんたちを連れてきてくれた、幸福を乗せたようなあの黄色い潜水艦は明日には幸福を乗せてまた海に潜っていくのだろう。
それをイメージすると、いつもより早い時間にもかかわらず眠気が襲ってくる。
「あのクソ野郎どもが出航するまで居てもいい」
「うん?」
「ログが溜まったらすぐ島を出なきゃいけないわけじゃない。だからあいつらが出航するまでおれらもここに停泊しておく」
それは…安心させてくれようとしてるのだろうか。
あの海賊たちが明日以降、ローくんたちがいなくなった後にまた来ないとも限らないから?
「駄目」
閉まりかけていた目をしっかり開いて隣のローくんの目を見据える。
急にわたしの口調が強くなったのに驚いたのか、面を食らったような顔をしていた。
「絶対に駄目」
「…なんでだ」
念を押すように言うと不服そうに眉間に皺を寄せる。