第1章 初恋
心臓を手に掴み、そのまま問うことなく握りつぶしてやりたかったが、何故イッカク達がいるにも関わらず、リアがこの状況に陥っているか。その理由はすぐに思い当たる。
リアのことだ。騒ぎになって、自分が世話になっている店に迷惑をかけたくないと考えてのことだろう。
それが分かってしまうと殺す訳にはいかなかった。
そして。
出来ることならリアに人が死ぬところを見せたくなかった。
そう思い至る自分に失笑する。
海賊だろ。なに綺麗事言ってんだ。
息を吐き、部屋を見渡す。
今日は下着も干されてなけりゃあ、スクラップされたファイルも見当たらない。
代わりに初日にはなかったものが目に入る。
『シャンブルズ記念』
メモの切れ端に書かれた文字。
小石、と言っても3センチほどはありそうなそれにメモの切れ端は添えられていた。
…ああ、昨日ここを出る時に部屋から出るのを見られないようにシャンブルズで移動したな。
その時におれ達と入れ替わった小石か。
ふ、と無意識に口元が緩む。
取っておくつもりか、これを。
ゴシゴシと体を洗う。
洗っても洗っても触られた感触が、気持ち悪さが消えない気がする。
1人になると思い出したくないのにあの気持ち悪い海賊が頭を過ぎる。
ローくんやペンギンくんに触られても気持ち悪さなんて感じなかったのに。
人に触られて気持ち悪いと感じたのは初めてだ。
嫌な男に瞳の色まで見られてしまった。
妙に思われてないといいけど…。
これ以上洗うとさすがに血が滲みかねない。
気持ち悪さが残る体を引きずるように全身をシャワーで流し、もう思い出さないように急いで体を拭いて着替えた。
わたしが部屋に戻るとすぐにベッドへ寝転ばされた。今日はわたしが壁側らしい。
「…これ、どうした」
「ん?」
これ、と指さす所を見ると、部屋着にしているペチコートが少し捲れて、先程洗いすぎた太腿が赤く擦れたようになっていた。
「…こ、擦りすぎました…」
捲れてるのを戻し、タオルケットを掛ける。
見ないで、の意思表示だったにも関わらず、タオルケットをずらされ、またしても太腿が露わにされる。