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【OP】GIFT

第1章 初恋




「…女将さん、です。お料理を運んだりするのはわたしの仕事なのでそういう訳には…」
「おれが言ってんだからその通りにしろよ!!!あんたは今からおれの接待係だ!言うこと聞かねェならこの店潰すぞ?」


その言葉に海賊全員が持っていた剣をチラつかせた。
周りを囲まれているせいでペンギンくん達の様子は分からないけど、あまり答えに渋っていると痺れを切らして何とかしようとしてくれるかもしれない。そうなればペンギンくんたちが配慮してくれたとしても、お店に被害が及ぶ可能性が出てくる。



「…分かりました。しかしわたしはこのお店で雇われてる身なので、1度形だけでも了承を貰ってきても良いですか?」
「ほ〜ん…ちゃんと戻ってこねェとすぐにここで暴れるかもしれねェぞ?」


はい、と返事をするが、ねっとりとした笑みを浮かべる表情に鳥肌が立って仕方ない。
表情に出てないだろうか。顔がひきつらないように笑顔でいなくては。



急いで女将さんに事情を話す。


「ごめんなさい、本来の仕事が出来ず…」
「謝るんじゃないよ!リアちゃんは何一つ悪くない。ウチの店を思ってくれてありがとうね…。何か隙があれば私らがどうにかする!」
「女将さんたちが怪我する方が嫌です。だから女将さんたちは無理をしないでください。大変だとは思いますが、料理とお酒、お願いします」


そこから言い逃げるように海賊たちの元へ戻る。
途中でハートの海賊団の6人を盗み見るとギリ、と歯を食いしばるようにしていた(ウニくんとハクガンくんの口元は見えなかったけど)。
きっと耐えてくれてるのだろう。せっかく来てくれたのに不快な思いをさせて申し訳ない。


元の場所へ戻ると、がっちりと逃がさないと言わんばかりに肩を抱かれ、気のせいかその手は胸に近いところに留まっている。


「もう酒が無くなったぞ!!!早く次を持って来い!」

その声に女将さんが急いで次を持ってくる。中には瓶を要求する人もいてその瓶はわたしが持たされ、お酌を強要される。


早く、早く帰って。


その思いが頭を支配しそうになるが、そうなれば顔に出てしまう。
そんな気持ちがバレてしまえば機嫌を損ねるかもしれない。
穏便に済むことを願いながらひたすら笑みを浮かべ続ける。




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