第1章 初恋
「もうすっかり常連さんみたいだね」
4人にビールを運びながら言うと、シャチくんは「まだ3回目なのにな」と笑った。
ペンギンくんとシャチくんはハートの海賊団の中でも1番来ている。
ウニくんとクリオネくんは初日と今日で2回目だ。
たった1回の差ではあるけど、わたしとしてはお店の外でもペンギンくんとシャチくんにはハートの海賊団の中でもお世話になったし、ローくんを除いて1番面識があるかもしれない。
それ故にすごい顔見知り感がある。
「ウニとクリオネは今日ローさんとオペ行ってたからさ、労おうと思って」
「へぇ〜!お疲れ様でした」
オペに同行した2人に言うと、「「いやいやそんな」」と照れたように笑った。謙虚さんだなあ。
今日はウニくんとクリオネくんの労いだからか、ペンギンくんもシャチくんも飲むペースがゆっくりしているなあ、と思っているとその後にハクガンくんとイッカクちゃんが入店してきて、そこからは結局どんちゃん騒ぎになっていった。
まあ、今は貸切状態だしね。
しかしその貸切状態は閉店までもたなかった。
カランカラン、と鳴るはずの鐘の音が鳴る余裕もなく乱暴に出入口の扉が開かれる。
「よォ〜〜〜〜〜!!!店の酒、全部持って来ォォい!!!!」
乱暴に入店した人に続き、ぞろぞろと人が入ってくる。
どの人もガラが悪く、ひと目で今日停泊したという町で騒いでいた海賊団だと言うのが分かった。
案内するまでもなくドカドカとお店に入り、適当な場所へと座っていく。
「おら、そこのねえちゃんよォ、酒持ってこいっつったろ」
ゲヘヘ、と気味の悪い笑い方をしながら船長と思われる大男が近付いてくる。
「…はい、すぐに…」
お酒を取りに行こうと背中を向けた瞬間、ペち、とお尻を触られる。
ズボンの上からとはいえ、虫酸が走った。
必死に気付かないふりをしてカウンターの裏へ行こうとすると「テメェ…」とシャチくんたちが立ち上がろうとする。
だめ、と口パクで言い、それを制止させる。
このお店の中で争いが起きては女将さんたちに迷惑がかかる。
万が一、このお店を目の敵にされると大変だ。
わたしが我慢すれば、大丈夫…。