第1章 初恋
「それでもやっぱり良ければお手伝いさせてください。部屋も貸してもらってるし、労働で返すには足りてないと思ってたんです」
「いいのに〜…また私達じゃ無理な時に頼むから、ね?」
ポンポン、と宥めるように肩を叩かれてしまえば返す言葉も見つからない。う〜ん。
「ほら、それよりお客さんがお呼びだよ!」
「、はい!」
夜も更けていき、ペンギンくんたちもへべれけになってきた頃。
カランカラン、と来客を知らせる音に扉へ目を向けると本日わたしを緊急オペに見舞わせた、んんっ、もといわたしに緊急オペをしてくれたお医者さんが入店してきた。
「きゃぷて〜ん!!!きゃぷてんもまたきたの〜??」
手にビールジョッキを持ち、千鳥足でたった今入店してきたローくんにシャチくんが絡む。絡み酒タイプかしら。
しかしペンギンくんも負けておらず(?)、シャチくんに続きビールジョッキを片手にキャプテンと慕うその人の肩に腕を回す。
「きゃぷてんは『おねえさん』に会いに来たんだろォ〜」
その言葉ごと、ローくんはペンギンくんの顔を自分から遠ざけるように手のひらを顔面に押し付けた。
「いらっしゃいませ」
「…こいつらと席を離してくれ」
うんざりしたように2人を引き剥がす。あれ?抜刀してないとはいえ刀で殴ってない??
「じゃあ…カウンター席はどうかな?」
出来るだけペンギンくんたちが囲むテーブルから離れたカウンターの1席を示すと、了承なのかローくんはそこに座った。
え〜ひど〜い、とブーブー文句を言い立てながらも2人はスゴスゴとテーブルへ戻っていく。
酔っている状態でも場合によっては解体されかねないことを認識してるのだろうか…。
席に着いたローくんの注文を聞きに行くと、開口一番に体調を聞かれた。
「なんともないよ。それより、女将さんたちには言ってないから内緒ね」
しー、と指を自分の口に当てる。近くに女将さんがいなくて良かった。
「そうか」とだけ言ってローくんはお酒と少量のおつまみを注文する。
その間も離れた場所でペンギンくんたちは相手にされてないにもかかわらず「きゃぷてんのいいとこ10選〜!!」と盛り上がっていた。